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樫尾聡美個展 - FACTORY
KASHIO SATOMI solo exhibition
2012.8.19(sun)- 9.9(sun)
12:00-19:00 木曜休館
樫尾聡美 
KASHIO satomi




関連データ


個展2011

個展2010「うごめくかたち」

個展2009


人間の心の奥底へ光を送ること
〜ある芸術家の言葉より(2012)

existence of TEN vol.3(2011)
O_laboratory(2010)

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ART NAGOYA 2012
ART OSAKA 2012
ART KYOTO 2012
Lineart 2011(ベルギー)
ART NAGOYA 2011

「工場」雑感

Factory=工場は、一部で「工場萌え」という言葉が使われているように、今では鑑賞の対象にもなっている。秩序を保ちつつ無数に広がる配管、煙突から立ち上る煙、高速道路から見える工業地帯の夜景。その構造美と豊かな情緒はその手の愛好家ではない僕にとっても胸を躍らされるものがある。
ふと子どもの頃の社会科見学を思い出した。ラインの上で次々と部品が組み立てられていくスピード感、得体の知れない機械たちがせっせと働いている…。普段立ち入ることのできない「秘密の場所」で同時進行している様々な出来事は、幼い僕にとってはどれも刺激的で、その光景は今でも鮮明に覚えている。
ここで記すだけでは足りないくらい工場はあまりにも魅力的な素材であるゆえ、樫尾がそれを選ぶのは至極自然なことではないかと思う。そして逆に言うと、それはありのままでも十分すぎるほどの存在なのだ。では、樫尾はどのように工場を作品化し、自分の表現としたのか注目してみたい。
布という軟質な素材と、樫尾の独特で鮮やかな色彩表現によって解釈された工場は本来それが持っているソリッドなイメージを排しつつ、誰もが工場に抱く「何かが生まれるわくわく感」を喚起させる。画面に取り込まれた歯車は装飾として役割を与えられ、活き活きと動き出す。工場の無機質でモノトーンな世界は、樫尾のフィルターを通ることによって、生命活動のようなリズムを伴ったスペクタクルへと仕立てられている。それはまさに、樫尾の過去の個展タイトルでもある「うごめくかたち」たちが呼吸をしているようである。
 この個展に限って「作品鑑賞」の類義語に「工場見学」を加えても良いだろうか。画面の中で起きているあらゆる動きに目を凝らし、一つ一つの作品を覗き込む。そこに難しい解釈など要らない。ただただ眼前に広がる樫尾作品の世界観に浸り、時として自分のイメージを重ね合わせる。誰もが工場に持つ高揚感を携えながら。


石川達紘