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樫尾聡美個展
KASHIO SATOMI solo exhibition
2011.10.08(sat)- 30(sun)
12:00-19:00 最終日17:00 木曜休館
会期中
東山みずほ
にも展示いたしております
樫尾聡美
KASHIO satomi
関連データ
樫尾聡美個展2010
樫尾聡美個展2009
existence of TEN vol.3
O_laboratory
carré à zurich
carré à zurich 告知展
carré2009
東山みずほ
街を歩いていると、様々な色に出会う。そんなことは普段あまり意識もしないが、眼に見える全てのものには色がついていて、だから世界は色に溢れている、色で埋め尽くされているとも言えよう。だけれど瞬間的に目に飛び込んでくるような、鮮烈な印象を放って心を捕まえに来るような色とは意外に見つけにくいものだ。そうぼんやりと考えていた私も、今日選んだ服は茶色のジャケットに黒いスカートで、灰色の背広に身を包んだ人々に囲まれながら電車に揺られていた。現実世界とはこういうものなのだろう。
樫尾の作品のある部屋に入ると、途端に私の目の前から曇った分厚いフィルターが取り払われる。無数の色が織り成す調和に、眠っていた感覚が心地良く呼び覚まされる。強烈な色彩も淡い色彩も、彼女の手により配置され重ねられ、雨上がりのアジサイを目にした時のような感覚に陥る。
時間が経つと、私の目は作品の細部へと入ってゆき、そこに繊細ながらもしっかりと描き込まれた線や、丸や、三角などから成る微細な文様が、息をひそめてうごめいているのを見つける。そうして画面を覆い尽くすその文様に、どこか懐かしさを感じるのだ。海の中から空を見上げた時、その海面で揺れ動いていた水と光の美しき網目模様。小さな沼地の表面で輝く藻や、そこに寄生する微生物たち。あるいは掬い上げようとした手から逃げて行ったおたまじゃくし。そんな記憶の断片を、私の脳裏に蘇らせる文様の群れは、細胞が分裂を繰り返すように、画面の中で生成変化してゆく。
飛行機や卵など、一見すると“かわいい”モチーフを扱っているが、それらを構成している細部からは、むしろ自然の営みや生命の神秘、あるいは呪術的で魅惑的な文様の持つ力といった要素が感じられる。“かわいい”モチーフにも、実際は作者の複雑な心理が反映しているのかもしれない。樫尾が創り出す鮮やかな色と文様の世界に、まるで自分の体内を覗き込むように、私はいつも深くもぐり込んでゆく。
山塙菜未