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中西祐喜個展-INSIDE

2012.4.30(mon)- 5.20(sun)
12:00-19:00 木曜休館
中西祐喜 
NAKANISHI Yuki





関連データ

個展(2011)
個展(2009)


ART KYOTO 2012
ART NAGOYA 2011
Lineart 2011(ベルギー)

東山みずほ(2011)

 「作品は人それぞれに感じ取ってほしい。」美術作品、殊に現代美術の作品に対して作家がよく言う言葉だ。
 私も人に無理矢理答えを押し付けるような作品は好きではない。よっぽどわかりやすく作品にメッセージを持たせない限り、観る者が作家の意図を完全に汲み取ることなど難しく、それを鑑賞者に求めるのは単なるエゴなのではないだろうか。作品をぼんやりと眺め、その中から好きな色や形を見つけ出したり、自分の部屋のどこに飾るか想像してみたり…。作品のメッセージなどわからなくても、楽しみ方は案外たくさんあるのだ。現代美術において、「それが何であるか」という明確な答えを作家の立場から示すことはあまり重要ではない場合もある。
 中西の作品は、観る者の想像力を引き出し、ゆだねるタイプの作品である。そのコンセプトは主に、「不在」、「痕跡」である。それは衣服の中の人物がすっぽりといなくなってしまった作品の様に、本来あるべき物がないものや、折り紙の折れ目のように、誰かが何かを行った跡を表現した作品である。観る者が空白を埋めたり、痕跡をたどったりするというように、自らの想像力で補うことで、人それぞれに作品を作り上げることができる。
 そのように彼は自らの思考の一部のみを形にすることで、私たちに想像を促し、観るものとの対峙の中で作品を完成させる。そしてそれらは想像力の働かせ方こそ違うものの、もとを辿ればすべて、「人間」の特徴や性質などに辿り着くものである。
 彼の作品は表情や姿などの人間自体の表面的な情報を持たない。しかし私は、完全な人の形を成し、直立あるいは意味ありげなポーズを取った人体彫刻よりも、表情豊かで、その内面までを捉えた、より人間らしい彫刻なのではないかと思う。

                     石川達紘