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中西祐喜 個展
2009.11.06(fri)-18(wed)
12:00-19:00
(最終日17:00)木曜休館
中西祐喜 
NAKANISHI Yuki
 ソファ、電話、帽子…一見すると、私たちが普段目にしているありふれたモノの集まりである。しかし、よく見ると、そこにある違和感に気づくだろう。チャックがないのに何かが詰められているリュック、角の生えた帽子。本来あるはずのものが無かったり、無いはずのものがある。中西の作品は、ありのままの姿でありながらも、意味深げである。それぞれに本来は柔らかさを持った帽子やリュックを粘土によって成形し、焼成されることで硬質なものとなり、まるで時間を止めたかのような空間を作り出している。
 中西の制作のテーマは、一貫して「人」である。自分自身も含め、「人」は何よりも身近な存在であり、我々は常に他人と関係しながら生きている。彼は、そんな人の感情や容姿など、一番身近でありながら、もっとも変化を見せる存在に興味を持っている。そのため、自然と制作の意識は「人」という存在を表現することに向けられてきたのである。そんな制作への意識は、彼の周りにはいつも人が集まり、多くの人と積極的に関わり合おうというという彼の友好的な性格によるものなのかもしれない。これまでも「人」を表現した作品を中心に制作してきた。それは現在まで変わらないものであるが、特に中西の今回の個展では、「人と人との関わり」という意識を垣間見ることができる。帽子でおしゃれをするということは他人の目を意識してのことであり、角もまた、相手に自分の強さを示すものである。自らを他人に示すこと、自分と他人との距離やつながり。そんな人と人とのコミュニケーションが彫刻という手段で表現されている。また、全ての作品はそのモノの所有している実体のない「人」の存在を感じさせる。「くしゃくしゃの手紙には何が書かれているのだろう。」「リュックには誰が何を詰め込んでいるのだろう。」私は、その見えない所有者たちに思いを巡らせながら実体のない人物を探る。その行為は、中西と鑑賞者のコミュニケーションでもあるのだろう。

                          石川達紘