山、雲、道路…。どこか見たことのあるような景色の隙間から、山室のイメージが溢れ出て溶け込む。彼の絵画はいつも、現実と非現実の境のない世界を案内してくれる。
特に最近の作品は、形、色彩共に、より鮮明になっているという印象を受ける。山室自身のフォーカスが定まってきたのだろうか。或は以前より彼が絵画の世界に入り込み、キャンバスの中に世界を構築する方法を見つけ出したのだろうか。
彼にとっての制作は、キャンバスの表面に絵具を載せるというよりも、画面の中を自由に動き回り、モチーフをお気に入りの角度から自由に組み立て、そこにお気に入りの時間や季節、色を与える作業のようである。その一つ一つに丁寧に居心地の良い場所を作ることで生み出された景色には、不思議とリアリティを感じ、どこか懐かしさすら覚える。
私たちが目にするのはキャンバスのサイズでしかないが、それは山室の生み出した世界の入り口を見ているに過ぎないのだろう。その向こうには、計り知れないスケールの風景が広がっているのだ。
ギャラリーの中に生み出される幾つもの新しい世界への入り口。それを覗き込み、空想に耽る時間が今から楽しみだ。