名前は知らない。 小さなゴム風船のなかにようかんを流し込み固めたお菓子を見たことがある。その中味をたべるときは風船の表面をつまようじでつつく。表面に小さな穴をあけられた風船はひゅるひゅるっとちぢんで、かわりに中のようかんが顔をだす。
はじめに表面をつくっていたゴムがゆっくりとその皮をはぐようにちぢんで、いれかわりに元あった大きさよりほんの少し小さくなったようかんの表面があらわれる。さっきまでゴムの質感をもってそこにあった小さなだ円球がほんのわずかな時間ののちにつやつやと黒いなまめかしい質感をした同じ形のものに変わったことを不思議な気持ちで眺めていたのを覚えている。
「境界」を感じたい。またその「出現」を、あるいは「消失」をとらえたい。
2010 yamamoto takeshi