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眞壁陸二展 The forgotten myth - 忘れられた神話-
MAKABE RIKUJI solo exhibition
2013.9.21(sat)- 10.20(sun)
12:00-18:00
木曜休館

眞壁陸二 
MAKABE Rikuji
 初めて作品を目にしたのは第1回の瀬戸内国際芸術祭、男木島。起伏の激しい島の坂道を下ると海が見えてくる。古びたトタン屋根の建物の壁面に作品が現れた。モチーフこそ樹木であるが、パターン化され、軽快に配置されるその様子は明らかに異世界だ。異質な光景が現れたのに、それはあたかも最初からそこに在るような、その場の色彩や光を取り込み、景色に寄り添う姿だった。
 いくつもの島々を舞台に展開され、多くの作家が参加する日本でも最大規模の国際芸術祭。その瀬戸内を皮切りにモスクワでの個展や沖縄のアートプロジェクトなど、活躍の幅を広げ、拠点を地元金沢へと移す事で実現した今回の個展。あの時に印象深かった作家の作品とこうして再び出会う事となった。
 描かれるいくつもの樹木。それは物語・神話の舞台としての森。様々な恵みをもたらす一方、得体の知れないものが潜んでいたり、光の届かない奥深くに感じる畏怖など、私たちの想像力を掻き立てイメージを与える場所である。また、樹木は我々よりも遥かに長く生き、切り倒されてもなお、建築などの材として形を保持し続け、人間を軽々と超越した時間を持つものでもある。
 作品として目に見えているのはその世界や時間のほんの一部であり、彼によって選び出され、繋ぎ合わされたピースが1つの画面として存在する。どことなく琳派の作品のように意匠的でリズミカルな構成であり、「無」を思わせる余白と不規則な秩序を持っている。ただし、一つの空間を描いた先人のそれと違い、計り知れない幾つもの時空間の集合体である。「有限の無限」という矛盾した言葉を用いるべきか、眞壁陸二の手法は、無限という想像の及ばない世界を可視化するという、途方も無い仕事にも見える。
その一方で木に樹を描くという行為・表現は、「無」を前提としたキャンバスでは忘れ去られている支持体の存在を思い起こさせ、絵画は有限の物質であることにも気付かされる。無限を表現することで、有限を弁証法的に証明しているのである。
「無限」という増殖し続ける存在、限りないテーマ。そして拠点を金沢としている現在、地方から世界へ発信していくという挑戦。眞壁陸二はこの2つのテーマをどう捉えていくのだろうか。これからの更なる活躍とともに注目していきたい。

(公財)金津創作の森財団 主事 石川達紘