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クニト個展 -11 010 0101-
KUNITO solo exhibition
2012.11.24(sat)- 12.9(sun)
12:00-19:00 木曜休館
クニト   
KUNITO
 1953年、ソビエト連邦のセルゲイ・コロリョフが開発に着手した大陸間弾道ミサイルR-7は、驚くべきことにサターンロケットやスペースシャトルが消えた現在も宇宙と地球を行き来する乗り物のとして生き延びている。優雅な4基のストラップオン・ブースターに包まれたメインエンジンは、ロシアアバンギャルドの遺児とも見て取れる。

 アーティストのクニトは、最初で最後のサクリファイスとなったライカ犬クドリャフカに同期するかのように、バージェス頁岩に封印された奇妙な実験動物のような、輝く飛行体を生産し続ける。恐らくスプートニク2号犬もアロマカリスも、ある法則によって現世に到達することが約束されなかったが故に、特権的な地位に就いた。そして10年後、スタンリー・キューブリックは実に科学的に宇宙空間に乗り出す決意をし、SFの最高傑作「2001年宇宙の旅」を地層に残す。しかしこの傑作も、カウボーイ乱痴気映画スターウォーズによってたちまち破壊され、最初で最後のSFとなることになったが、その見返りとして永遠の命を得た。

 クニトが好奇心を持つ事象は、上記のようにA地点からB地点に到達する間に、奇妙な時空の裂け目に迷い込んで消失した「X」への執着である。科学でもなく、思想でもなく、解答と到達点が最初から消去され、ブラックマターのようなインターフェースそのものが浮動する場の狂気。それこそが、唯一アートやSFに許された、原初的でありながら究極の熱平衡へと落ちてゆく楽園なのである。ゆるゆると25次元の平滑面をすべり落ちる詩的で私的な宇宙論へようこそ。

椿昇(コンテンポラリー・アーティスト)