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所志帆個展 -side
TOKORO SHIHO solo exhibition
2011.5.21(sat)- 6.12(sun)
12:00-19:00 最終日17:00 木曜休館
作家在廊日/5. 21(土) 22(日)、6. 4(土) 5(日) 12(日)
前回の2002年から9年ぶりのこちらでの個展。当時、卯辰山工芸工房に所属していたころであり、板ガラスに細かいドットの装飾を施した、すぐに所志帆のものだと分かるこの作品、それがまさに生まれたばかりの頃だった。長い時間をかけて作られたことが感じられる立体が30点ほど。そこから読みとる確かな手仕事は心地よく長く付き合えそうな気持ちにさせてくれた。
その後、富山ガラス研究所で助手を2008年に終え、現在は出身地である岐阜に拠点を移す。個展の度に届く案内からは、彼女の作品がゆるやかに熟す段階を常に確かめることができた。
制作過程において、一枚一枚規則的に模様が施され、次の段階ではそれを何層にも重ねて溶着する。炉の中で小さなドットにわずかに閉じ込められた空気が丸く姿を残し、最終的にひとつの塊として磨き上げられる。
使用するのは私たちが普段よく見ている窓の板ガラス。無色透明なそれらは重なるとうっすらと青緑に色づいて見える。ガラスの成分に含まれる鉄イオンの色なのだが、溶着することにより更に強くなる。海のような、空のような、そんな印象を醸し出すとともに、施された模様の重なりや内部にたまる光、屈折するためにおこる視覚変化など、角度や様々な光の作用と、作品そのものから見える向こう側の景色までも包み込むような、新しい発見がある。
作品というのは作家そのものだということを常々私は感じている。彼女の場合も同様、素直に仕上げられた形は場との調和を好み、ガラスの持つ無機質な質感からは想像できないほどの温かみを持っている。そんな穏やかで柔らかな存在は、さりげなく私たちの生活に寄り添ってくれるのではないだろうか。(金田みやび)