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山崎美和 個展 —静かにたたずむ時間—
YAMASAKI MIWA Solo Exhibition

2010.5.08(sat)-30(sun) 12:00-19:00
木曜休館
山崎美和
YAMASAKI Miwa

山崎美和 個展によせて
             陶芸家 戸出雅彦

 私が卯辰山工芸工房専門員として勤務していた頃、山崎美和は沖縄芸術大学を卒業し2003年に研修のため入所してきた。高知県出身の彼女は、沖縄そして金沢へ…南へ北へ…と巡ってきた。卯辰山入所時の私の印象は“陶芸の基礎的なことがしっかり身に付いている”ということである。美術大学,研修機関で学ぶ者の多くは、よりオリジナルな表現を求めているが、工芸素材を選択した作り手は、やはり素材、技法といったことを蔑ろには出来ない。“表現したいイメージにより近づけるため素材を選択する”だけでなく“イメージそのものを素材(陶土)や技法(ロクロ)と関わりながら探し出していく”のである。山崎も同様のプロセスを経ているように思う。

 陶芸で多く使われる酸化金属は鉄、銅などであるが、彼女は卯辰山時代から“銅”を頻繁に使用している。辰砂釉と呼ばれる赤く窯変する釉薬を好んで使用していた。陶芸において“銅”は窯の雰囲気により大きく変化する金属である。今回の出品作においてもこの“銅”が使用されている。磁器土をロクロ成形し、器側面に“銅”を塗り、マット系釉薬を施し、1250℃で焼成する。炉内では、薄く成形された磁器の外側に塗られた銅が、内側に染込みぼんやりとした緑の表情を奏でている。
銅系釉薬は酸化、中性、還元といった焼成の炉内雰囲気によって微妙な色変化をもたらす。炉内の置き場所ひとつでも違う変化をするのである。

 今回、この文を書くにあたり幾つかの質問をした。高知—沖縄—金沢と巡って来たこと…作品の変遷のこと…。山崎は「流れに任せてここまで来ました」との答え。作品も土地も、流れに任せてここにたどり着いたのだろう。それは一見受動的に思えるがそうではない。前述のように一つ一つのプロセスから、イメージを探し、膨らませながら、選びながら…作品も生き方も前へと進んで来たのだろう。それ故なのだろうか、山崎の作品には、揺らがない“強さ”と同時に“しなやかさ”を感じるのである。