小さな頃に見ていた工場の立ち並ぶ景色。
油の浮かぶ虹色の水たまりの危険な美しさ。
煙突のけむりと混ざり合うように漂う雲。
麓で微生物のようなに行き交う車の後ろでたたずむ山の安らぎ。
悪いものを取り除いてくれるようであり、
何者かによってどこかへ連れて行かれるようでもある向こう側の空。
小さな頃に感じていたその景色からの様々なイメージ。
惹きつけ意識を浮遊させ、鮮やかで色彩豊かに変容していく自然の光景は
生命力を感じさせ、エネルギーを与えてくれる。
そしてイメージを喚起し、増殖させ、小さな頃からの記憶と
影響し合って絵の中で新たに視覚化されていく。
決して美しいだけではない一人の人間、一つの自然のように、
一個の存在として描かれた絵が自立するよう想いを籠める。
2009 山室淳平