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コフネコトモ子 個展
2009.8.21(fri)-9.02(wed)
12:00-19:00(最終日17:00)木曜休館

コフネコトモ子 
KofunekoTomoko

 例えば画家ならばキャンバスの上に絵筆を走らせる瞬間、あるいは彫刻家が硬い石を黙々と鑿でうがつ瞬間、そしてダンサーは自分自身の身体を使って舞踊する瞬間、そこには何らかの“解放”という感覚が生まれるはずである。絵を描くという行為、何かを彫り削り、形を作り出すという行為、あるいはこの身一つを使って舞うという行為-そういった芸術的行為が、自分自身の内にあるこの思いを、言葉ではもうどうにもならない思いを表現できる、唯一の媒体なのだと感じる瞬間が存在するのではないだろうか。
 コフネコトモ子の創作活動に大きな影響を与えたのがアフリカンダンスである。原始的な生活をいまだ続けている民族に多く受け継がれているこのダンスは、一つ一つの動きが自然と密接な関係を持っている。大地への感謝や畏怖といった、その民族と自然界が古来から築きあげてきた関係性に深く根付いた感情が、ダンスの中で表現されるのだ。コフネコトモ子の舞い姿を見た時の、その迫力や存在感を私はよく覚えている。全身を使って激しく踊り狂う彼女の姿、そして何よりも、自然との一体感を得てそれを放出する瞬間の恍惚とした表情には、まさに“解放”の喜びが溢れていた。ただ踊るだけにとどまらず、より独特のパフォーマンスへと、自らの表現を高めることを求める彼女が、新たに挑戦しているのがボディーぺインティングである。原色を中心とした激しい色彩によって描かれる絵画作品、それを身に纏うという大胆な表現によって、彼女はより一層強烈で直接的な自己の解放と他者への伝達を試みている。
絵画作品であろうと、ボディーぺインティングであろうと、ダンスであろうと、コフネコトモ子の作品が見る者に与える、エネルギッシュで底抜けの明るさをもった世界観は変わらない。手のひらサイズのキャンバスにも、生身の人間の肉体の上にも、彼女が内面を解き放ちながら感じている快感が無限の色彩を伴って渦巻いているのだから。
                          山塙菜未