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小林寛人 個展
2009.3.24(tue)-4.05(sun)
12:00-19:00(最終日17:00)木曜休館

小林寛人 
KOBAYASHI Hiroto
 あらゆる色彩を排除し、白という色のみを用いて描かれる小林の作品。じっと作品を見つめているうちに、私の目の前には、窓の向こう側の景色や棚に並んだ本が、ゆっくりと現れる。描かれたモチーフは一見、見えにくく、あやふやなものであるかのように思われるが、この真っ白な空間の中で小林の作品に対峙する私の感覚は研ぎ澄まされ、うっすらとしたコントラストや微妙に描き分けられた無数の“白”があることに気づかされる。そこでは、色彩によって引き起こされる様々な感覚は忘れ去られ、描かれたモチーフに対する作家の強い好奇心のようなものや、心の動きも感じられない。私に何かを訴えかけるわけでもなく、感情移入を許すでもなく、窓の向こうには家が、棚には本が、ただあるだけだ。
 色をもった作品を眺めている時、描かれているモチーフは無意識に、何気なく目に入ってくるものである。だが小林の絵を前にした時、私はしかと目を見開き、そこにぼんやりと、しかしながら確かに描かれているはずの何かを見ようと、白い世界の中で自らの感覚を懸命に刺激する。
 小林にとって初の個展となる本展覧会は、時には物体のあるがままを、また時には具象と抽象の間に位置するモチーフを、色、立体感、質感などの余計な要素を一つ一つそぎ落としながら描くことに、素直に向き合った作家の様子を伝えてくれるものである。そして同時に、不器用ながらもまっすぐに描き続ける小林の、次なる展開をも予感させてくれるものではないだろうか。
   
                               山塙菜未